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竹下ユキ
エッセイ


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2008年8月

シェー

先日、赤塚不二夫さんが亡くなられた。

赤塚漫画というのは、特別熱烈ファンでなくても昭和30年代に生まれた者にとっては必ず通らなければならない通過儀礼のようなもので、「おそ松くん」や「天才バカボン」や「ひみつのアッコちゃん」を知らずに育つのはかなり難しいことであった。

わたくしは一人っ子だが母に大勢姉妹がいて、その結果私には大勢従兄弟がいて(ほぼ全員男子だった)、それが子供の頃は荒川にあった祖父母の家で週末しょっちゅう合宿をしていた。

信じられないかもしれないが、幼少の頃私は極端な人見知りで、例え従兄弟であろうと打ち解けて話をすることはできなかった。

しかし奴らは信じられないような野蛮さで赤塚不二夫マンガのキャラになりきって会話をしていた。実は私はそんな会話を、童話など読む振りをしながら静かに聞いて楽しんでいた。

ある時みんなで「シェー」をやろうということになり、私にも参加をうながした。わたくしはそんな下品なことはしたくない・・・と思ったが、一番年上の優しい従兄が親切かつ丁寧に、「シェー」というのはこうやってやるものだよ・・・と手取り足取り、私にそのポーズをさせたのでつい私もやってしまった・・・という迂闊な思い出がある。

今ならいくらでもできることが当時は恥ずかしかったのだろう。人間は成長するものだ。

ここ何十年もその従兄弟たちともご無沙汰しているが、赤塚不二夫氏は私の幼少時代にたくさんの思い出を残してくれた。 合掌。

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